東京都板橋区 早野哲生
ガーデニングとミミズについて 花の市場に20年もいたのとは関係なく、何となく実物(みもの)と 葉っぱが好きで、東京に住みだして25年、私はかなりの植物人間であ ると思います。 今の家を建て直す前、築30年近いぼろ屋を買って、ローンを払い終 わるまで、鉛筆の転がる畳の上で暮らしていました。ブリキの外壁が夏 に暑くなるので、甲子園球場みたいにツタで屋根まですっぽり覆って、 快適でした。柱と内壁の間から、葉っぱが茶の間に顔を出したり、まさ に彼らと共存していたのです。 13坪ほどしかない地面の10坪を使って家を建て直したので、残っ たのは、地球には繋がっているとはいえ、植木鉢ほどの広さです。そこ にバラ4株、桜、サクランボ、杏、ブドウ、きんかん、さつき、2種類 のアイビー、ブルーベリー、アジサイ、そして食べかすの種から生えて きたミカンとビワ。そのほか、冬の間は部屋の中のガジュマルと名前を 忘れた鉢物が表の隙間に置かれます。 バラは2年目で2階に届き、毎年ゴールデンウィークには黄色の花が 家の前を通る人を驚かすほど咲きます。南向きの道の向こうは崖。日当 たり永久保証は、何でもかんでもどんどん大きくします。 そこでミミズです。 でかい植木鉢のような土地はすぐにやせます。西隣りの観音堂に小さ な雑木林があって、秋にはすごい量の枯れ葉が我が家の前に吹き溜まり ます。これを拾って20センチほどの厚さに敷き詰めます。 冬の間は寒さを防ぐ絨毯。春になれば腐って腐葉土になり、ミミズが かき混ぜて土を生き返らせる、はずでしたが、最初はだめでした。 枯れ葉が次の年の夏になってもまだ枯れ葉のままでした。排水溝や雑 木林を掘りまくって集めたミミズもいなくなってしまう。 原因は薬剤散布だと気がつきました。桜とバラの根元にはオルトラン。 マラソンと殺菌剤を狭いところに何度もぶっかけていました。そこで取 りあえずバラの殺菌剤を最小限使う以外、薬をやめました。 すると枯れ葉はちゃんと腐り、ミミズはいっぱい増えて土が軟らかく なりました。葉っぱ諸君も薬の助けがなければ、それなりに自分でがん ばって思ったほどは穴だらけになりませんでした。 今年からは出窓の植木鉢にもミミズを入れました。土が硬くなると、 含水率が下がってすぐに乾くようになってしまいます。そしてここでも 失敗がありました。雨のときミミズが現れるのは、うれしいからではな く、溺れて水の上に逃げてきているわけですが、植木鉢に水をやると出 てきたミミズがはねて外に落ち、床の上でひからびているという事件が 起こってしまいました。植木鉢にミミズを入れるときは、土を低めに。 もう一つ失敗。ガジュマルの鉢にもミミズを入れました。値が張った ので大きな鉢に変えると、すぐにまたいっぱいになるの繰り返しできり がない。そこでミミズに土をほぐしてもらうことにしたのですが、入れ たことをすっかり忘れて、ありが巣を作りかけていたので殺虫剤を水に 入れてたっぷりかけました。するとあのミミズが信じられない素早さで 土の上に現れてぴょこんぴょこんはねています。急いで安全な場所に移 してきれいな水のシャワーで洗ってやったら、何とか無事だったようで す。薬はよそう。 |
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