ステラウロスの6500万年
7.新しい二人
 そのころの人間は、もう一様人間やったけど、家族は今とは違って
ライオンみたいやった。母親中心で父親はパートタイムというか臨時
ちゅうか、そのとき一番強いやつが一人で父親を全部やったんや。た
だし人間の場合ライオンより例外がずっと多かったな。家族によった
ら半分ぐらい例外のこともあった。早い話、人間はそのころでも、体
力がライオンほどは無かったし、ちょっとだけ、恋心が生まれかけて
たみたいや。

 ファータイルクレッセントに選ばれた人間の中の中に、他とはちょ
っと違う若い二人がいてた。背の高いおにいちゃんと、小柄でぽっち
ゃりとしたおねえちゃんや。きょうだいやないのに、12、3才のこ
ろからいつも一緒にいてた。理由は別にない。近くに来るとなんとの
う目がおうて、ほんだらしばらくにっこりしながら見つめおうて、そ
れから手ぇつないで、ずーと一緒に居てるゆうことや。
 輝くスフィンクスの元から人々が旅立ったのは、ピラミッドの時代
の何万年も前やったから、これが一度目のエクソダス−出エジプト−
ちゅうことやな。別の選ばれた人々はそのままナイルのほとりで文明
の種となったんや。つまりこの二つの文明の祖先は同じなんや。

 ファータイルクレッセントまで旅して、それまでの狩りだけの暮ら
しから、作物を育てることを教わって、みんな少しずつ新しい生活に
馴染んでいった。けど家族のしくみは今まで通りやったのに、あの二
人だけは別やった。穀物の作り方も一番最初に覚えて、食べ物を蓄え
る事を知ったのも一番やった。他の人間達より余裕のできるのも早か
った。この二人がアダムとイブなんかも知れん。
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